精神科病棟という戦場で②二人のおばあちゃん

高齢の女性患者さんが二人入院してきました。

 

一人は、とてもしっかりしたおばあちゃんです。

ただ、これまで家族や周囲の人、医療や介護の関係者、関わるすべての人とうまくいかなくなり、たくさんの苦情や訴えを繰り返してきた方でした。

今回も施設でトラブルとなり、警察を呼ぶなどの事態になって入院となりました。

話を聞いていると、周囲に対する不信感がとても強く感じられます。

思い込みや勘違いもあるのかもしれません。

それでも、まず大切なのは本人の気持ちを受け止めること。

「ちゃんと話を聞いていますよ」

「その気持ちはつらかったですね」

そんな姿勢で関わることから始まります。

入院後は比較的落ち着いて過ごされていて、まずは安心しました。

 

もう一人は、一人暮らしを続けてきたおばあちゃんです。

年齢を重ねるにつれ、一人で暮らす不安が大きくなってきたのでしょう。

体の不調をたくさん訴えたり、家族に何度も電話をかけたりして、ご家族だけでは支えきれなくなり入院となりました。

ところが病院に来ると、とても穏やかです。

もちろん年相応の体の不調はありますが、家で訴えていたような症状はほとんどありません。

昔ながらの昭和のおばあちゃんという感じで、しっかりしていて、とてもかわいらしい方です。

もしかしたら、体が苦しかったというより、一人でいることが不安で寂しかったのかもしれません。

 

同じ高齢者でも、抱えている不安や苦しみはまったく違います。

誰も信じられなくなってしまった人。

一人でいることが不安になってしまった人。

 

私たちが知らない時代を生き、想像もできないような苦労を重ねてきた人たちです。

だからこそ、せめて今は大きな不安なく、安心して過ごしてほしい。

そんなことを考えた夜勤でした。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました🍀

嫌いと言われた患者さんとの再開

精神科病棟という戦場で

精神科病棟歴15年。

毎日が戦場のようで、心が折れそうになる日も少なくありません。

 

昨日は夜勤明けでした。

いつものように疲れ果てて、ヨレヨレになりながら帰ろうとしていた時のことです。

病院の廊下で、以前担当していた患者さんにばったり会いました。

 

この方は何年間もの間、人に会うことや外に出ることが怖くて引きこもりの生活でした。精神的に不安定にで自傷行為を抑えられなくなり、入院となった患者さんです。

 

初対面はこの患者さんにとっては最悪でした。

始めて合ったとき彼女は「つらい、死にたい」と訴えました。

私は看護師として言葉をかけましたが、それは彼女が求めていた言葉ではなかったのでしょう。

 

「看護師さん嫌い!担当なんて嫌だ」

 

そう言われて、勤務が始まったばかりなのに気持ちが重くなったことを覚えています。

それでも入院中、一緒に自傷行為の代替方法を考えました。

そして昨日。

久しぶりに会えた彼女はとても明るく元気でした。

退院後もきちんと外来に通い、作業療法にも通い、地域のコミュニケーションの場にも足を運んでいるようです。

 

精神科では、感謝されることは決して多くありません。

「ありがとう」より「やっと帰れる」が多い世界だと思います。

だからこそ、彼女のように「入院してよかった」と言ってくれる患者さんの存在は、折れそうな心を元気にしてくれます。

 

昨日も彼女は私を見つけるなり、

「会えた!一緒に写真撮って!」

と声をかけてくれました。

夜勤明けでボロボロの顔だったので少し恥ずかしかったけれど、一緒に写真を撮りました。

 

いつもなら疲労困憊で帰るだけの夜勤明けでしたが、その日は少しだけ心が温かかった。

たった数分の再会でしたが、久しぶりに嬉しい気持ちで帰ることができました。

もちろんいつも体は限界です。

家に帰り、お風呂に入ってソファーに座った瞬間、そのまま意識を失うように動けなくなってしまいました。

 

精神科病棟という戦場で働いていると、しんどいことの方が圧倒的に多い。

それでも時々、こんな小さな出来事があるから、また明日も頑張ろうと思えるのかもしれません。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました☘️